12. QoS (Quality of Service)

12.1 概要 (Overview)

5GのQoSモデルはQoSフローに基づいています (TS 23.501 [3] 参照)。保証されたフロービットレートを要求するGBR QoSフローと、要求しないNon-GBR QoSフローの両方をサポートします。NASレベル（AS≒無線区間の制御を除くUEからUPFまでのE2E区間）では、QoSフローがPDUセッション内でのQoSを差別化する最小粒度となります。QoSフローは、NG-Uトンネルで用いられるGTP-U 拡張ヘッダのQFI (QoS Flow ID) によってPDUセッション内で識別されます。


+--------------------------+         +----------------------+      +-----------------+
|        UE                |         |      NG-RAN (gNB)    |      |   5GC (UPF/AMF) |
+--------+-----------------+         +--------+-------------+      +--------+--------+
|  NAS   |<---- QoS Rule ---->|         |                      |------>|   SMF   |
| /App   |                    |         |                      |      +---------+
+--------+-----------------+         |                      |
|  AS    |<---- Mapping Rules ->| AS      |<---- QoS Profile --->|
| (SDAP) |<-- QFI (DL, opt) -->| (SDAP)  |                      |
+--------+-----------------+   |     ^   |                      |
|        | DRB              |   |     |   | DRB Mapping        |
| (PDCP/ |<------------------+->| (PDCP/ |                      |
|  RLC/  |                    |   | RLC/  |                      |
|  MAC)  |<---- QoS Flow ------>|  MAC)  |<---- QoS Flow ------>| UPF (NG-U Tunnel)|
+--------+-----------------+         +--------+-------------+      +-----------------+
  |<----------- Uu --------------->|        |<----------- NG ------------->|

図12-1 QoSアーキテクチャ (概念図)

NG-RANにおけるQoSハンドリングの基本ステップ:

5GCはUEごとに1つ以上のPDUセッションを確立します。
NG-RANは、各PDUセッションに対し、少なくとも1つのDRB (Data Radio Bearer) を確立します。必要に応じて追加のDRBを設定できます。
NG-RANは異なるPDUセッションに属するパケットを異なるDRBにマッピングします。
NASレベルのパケットフィルタ（UEと5GC）がUL/DLパケットをQoSフローに関連付けます。
ASレベルのマッピングルール（UEとNG-RAN）がUL/DLのQoSフローをDRBに関連付けます。

NG-RANと5GCは、パケットを適切なQoSフローとDRBにマッピングすることで、サービス品質（例：信頼性、目標遅延）を保証します。

QoSフローの特性

NASレベルでは、QoSフローは以下の要素によって特徴づけられます。

QoSプロファイル: 5GCからNG-RANに提供され、無線インターフェースでの扱いを決定するために使用されます。
QoSルール: 5GCからUEに提供され、ULトラフィックとQoSフローのマッピングを指示します。
フロータイプ: GBR または Non-GBR。

QoSプロファイルに含まれる主要パラメータ (TS 23.501 [3]):

パラメータ	説明	適用フロータイプ
5QI (5G QoS Identifier)	QoS特性（優先度、遅延、PERなど）に関連付けられたスカラー値。標準化/事前設定済みの特性は5QI値から導出される。	両方
ARP (Allocation and Retention Priority)	リソース割り当てと保持の優先度。	両方
GFBR (Guaranteed Flow Bit Rate)	保証されるビットレート (UL/DL)。	GBRのみ
MFBR (Maximum Flow Bit Rate)	許容される最大ビットレート (UL/DL)。	GBRのみ
Maximum Packet Loss Rate	最大許容パケット損失率 (UL/DL)。	GBR (Voice media)
Delay Critical Resource Type	遅延クリティカルなリソースタイプか否か。	GBRのみ
Notification Control	GFBRが保証できない/できるようになった場合にRANがSMFに通知するかどうか。	GBRのみ
RQA (Reflective QoS Attribute)	このフローの一部トラフィックがRQoSの対象であることを示すフラグ。	Non-GBRのみ
Additional QoS Flow Information	特定のNon-GBRフローでトラフィックがより頻繁に発生する可能性を示す情報。	Non-GBRのみ

さらに、PDUセッション全体 (Session-AMBR)、UE全体 (UE-AMBR)、UEごとのスライス (UE-Slice-MBR) にAMBR (Aggregate Maximum Bit Rate) が関連付けられます。

ASレベルのマッピングと処理

AS (Access Stratum) レベルでは、DRBが無線インターフェース上でのパケット処理を定義します。

QoSフローからDRBへのマッピング: NG-RANはQFIと関連QoSプロファイルに基づき、QoSフローを適切なDRBにマッピングします。同じ転送処理を受ける複数のQoSフローは同じDRBに多重化されることがあります。
ULマッピングルール:
- **Reflective mapping (RQoS):** UEはDLパケットのQFIを監視し、対応するULパケットを同じDRBにマッピングします。DLパケットにはNG-RANがQFIを付与します (RQAが有効な場合)。
- **Explicit Configuration:** RRCシグナリングでQoSフローとDRBのマッピングルールを明示的に設定します。
- UEは常に最新のマッピングルールを適用します。ルール更新時、UEは古いベアラ上でEnd Markerを送信します。
QFIシグナリング: DLではRQoS目的でQFIがUu上で通知されることがあります。ULではNG-RANがUEにQFIをUu上で通知するよう設定できます。
デフォルトDRB: 各PDUセッションに対してデフォルトDRBを設定可能。マッピングルールがないULパケットはデフォルトDRBにマップされます。

12.2 ECN (Explicit Congestion Notification)

gNBとUEは、IPヘッダのECNフィールドを使用する輻輳通知をサポートします（[27]のclause 5参照）。これにより、パケットロスが発生する前にネットワークの輻輳状態を端末に通知できます。