キリスト教(kristendom)
Grade 7-9では、キリスト教の中心的な考え方と聖典、およびキリスト教の三大宗派(プロテスタント、カトリック、正教会)の特徴について学びます。
キリスト教の中心的な考え方と聖典
キリスト教の中心的な考え方は、唯一の神(Gud)の存在と、その神の子であるイエス・キリスト(Jesus Kristus)を通じての救済に基づいています。キリスト教の聖典は聖書(Bibeln)であり、旧約聖書(Gamla Testamentet)と新約聖書(Nya Testamentet)から構成されています。
キリスト教の主な教義には以下のようなものがあります:
- 三位一体(treenighet):父なる神、子なるキリスト、聖霊(Den Heliga Anden)は一つの神の三つの位格である
- 原罪(arvsynd):人間はアダムとイブの罪により生まれながらに罪を持っている
- 贖罪(försoning):イエス・キリストの十字架上の死は人間の罪を贖うためのものである
- 復活(uppståndelse):イエス・キリストは死後三日目に復活した
- 救済(frälsning):信仰を通じて人間は救われる
キリスト教の三大宗派
プロテスタント(protestantism)
プロテスタントは16世紀の宗教改革(reformation)から始まった宗派で、マルティン・ルター(Martin Luther)などの改革者によって創始されました。プロテスタントの特徴は以下の通りです:
- 「聖書のみ」(sola scriptura):聖書が信仰の唯一の権威である
- 「信仰のみ」(sola fide):救いは行いではなく信仰によってのみ得られる
- 万人祭司(allmänt prästadöme):すべての信者は神に直接アクセスできる
- 簡素な礼拝形式と教会建築
- スウェーデンではルーテル派(lutheranism)が主流
カトリック(katolicism)
カトリックはローマ・カトリック教会(Romersk-katolska kyrkan)を中心とする宗派で、教皇(påven)を頂点とする階層的な組織構造を持っています。カトリックの特徴は以下の通りです:
- 聖書と伝統(tradition)の両方が信仰の権威である
- 七つの秘跡(sakrament):洗礼、堅信礼、聖体、告解、病者の塗油、叙階、婚姻
- 聖人(helgon)崇敬と聖母マリア(Jungfru Maria)への特別な敬意
- 教皇の無謬性(ofelbarhet):信仰と道徳に関する公式な教えにおいて
- 豊かな典礼と芸術的伝統
正教会(ortodoxi)
正教会は東方正教会(Östortodoxa kyrkan)とも呼ばれ、主に東ヨーロッパ、ロシア、中東などで信仰されています。正教会の特徴は以下の通りです:
- 聖書、伝統、教会会議(kyrkomöten)の決定が信仰の権威である
- イコン(ikon):聖なる人物や出来事を描いた宗教画が重要な役割を果たす
- 神化(gudomliggörelse):信者が神の恩寵によって神の性質に与ることを目指す
- 自主独立した地域教会(自治教会)の集まりである
- 豊かな典礼と神秘主義的伝統
世界宗教(världsreligioner)
Grade 7-9では、イスラム教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、仏教の中心的な考え方と聖典、および現代社会における様々な解釈と実践について学びます。
イスラム教(islam)
イスラム教は7世紀にアラビア半島で預言者ムハンマド(profeten Muhammed)によって創始された一神教です。イスラム教の中心的な考え方と聖典は以下の通りです:
- 唯一神アッラー(Allah)への信仰
- 聖典クルアーン(Koranen):アッラーからムハンマドに啓示された言葉
- 五行(de fem pelarna):信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼
- 預言者ムハンマドの言行録ハディース(hadith)
- 来世(livet efter detta)と最後の審判(den yttersta domen)への信仰
ユダヤ教(judendom)
ユダヤ教は世界最古の一神教の一つで、ユダヤ人(judar)の民族宗教です。ユダヤ教の中心的な考え方と聖典は以下の通りです:
- 唯一神ヤハウェ(JHVH)への信仰
- 聖典トーラー(Torah):モーセ五書を中心とする律法
- タナハ(Tanakh):トーラー、預言書、諸書からなるユダヤ教聖書
- タルムード(Talmud):口伝律法の解釈と議論を集めた文献
- 選民思想(det utvalda folket):神との契約に基づくユダヤ人の特別な使命
- 律法の遵守(att följa lagen):613の戒律(mitzvot)
ヒンドゥー教(hinduism)
ヒンドゥー教はインド亜大陸で発展した宗教で、多様な信仰体系と実践を含む複合的な宗教です。ヒンドゥー教の中心的な考え方と聖典は以下の通りです:
- 多様な神々の存在:ブラフマー(Brahma)、ヴィシュヌ(Vishnu)、シヴァ(Shiva)など
- ブラフマン(Brahman):すべての存在の根源となる究極の実在
- アートマン(Atman):個人の魂、本質的にはブラフマンと同一
- カルマ(karma):行為とその結果の法則
- 輪廻(samsara):死と再生の循環
- 解脱(moksha):輪廻からの解放
- 聖典:ヴェーダ(Veda)、ウパニシャッド(Upanishad)、バガヴァッド・ギーター(Bhagavad Gita)など
仏教(buddhism)
仏教は紀元前5世紀頃にインドで釈迦(Siddharta Gautama)によって創始された宗教・哲学です。仏教の中心的な考え方と聖典は以下の通りです:
- 四諦(de fyra ädla sanningarna):苦諦、集諦、滅諦、道諦
- 八正道(den åttafaldiga vägen):正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定
- 無我(icke-jag):永続的な自己の否定
- 縁起(beroende uppkomst):すべての現象は相互依存的に生じる
- 涅槃(nirvana):苦からの解放、悟りの境地
- 聖典:パーリ語経典(Pali-kanon)、大乗経典(Mahayana-sutror)など
現代社会における様々な解釈と実践
現代社会では、各宗教内でも様々な解釈や実践が見られます。例えば:
- リベラルな解釈:現代的価値観と宗教的教えの調和を図る
- 保守的な解釈:伝統的な教えと実践の維持を重視する
- 原理主義的解釈:聖典の文字通りの解釈と厳格な実践を主張する
- 神秘主義的解釈:個人的な神秘体験や内面的な信仰を重視する
- 世俗化(sekularisering):宗教的実践の個人化と私事化
新宗教運動と世俗的人生観
Grade 7-9では、新宗教運動、新霊性、個人的宗教性とその表現方法、および世俗的人生観について学びます。
新宗教運動(nya religiösa rörelser)
新宗教運動は、主に19世紀以降に発生した比較的新しい宗教的グループや運動を指します。例えば:
- エホバの証人(Jehovas vittnen)
- モルモン教(Mormonism)
- サイエントロジー(Scientologi)
- 統一教会(Enighetskyrkan)
- ハレ・クリシュナ(Hare Krishna)
新霊性(nyreligiositet)
新霊性は、伝統的な宗教の枠組みを超えた、より個人的で折衷的な霊的実践を指します。例えば:
- ニューエイジ(New Age):占星術、チャネリング、クリスタルヒーリングなど
- ネオペイガニズム(neopaganism):ウィッカ(Wicca)、アサトゥル(Asatro)など
- 現代的なヨガと瞑想の実践
- 代替医療と霊的ヒーリング
個人的宗教性(privatreligiositet)
現代社会では、多くの人々が制度化された宗教に属さず、個人的な信仰や霊性を発展させています。個人的宗教性の特徴は以下の通りです:
- 「自分なりの」信仰の構築:様々な宗教や霊的伝統からの要素の組み合わせ
- 制度や権威よりも個人的経験を重視
- 柔軟で変化する信仰体系
- 「スピリチュアルだが宗教的ではない」(spirituell men inte religiös)という自己認識
世俗的人生観(sekulära livsåskådningar)
世俗的人生観は、超自然的な存在や力に頼らず、自然主義的な世界観に基づく人生観です。主な例としては:
- ヒューマニズム(humanism):人間の価値、尊厳、理性、倫理的責任を重視
- 無神論(ateism):神の存在を否定する立場
- 不可知論(agnosticism):神の存在について知ることができないとする立場
- 自然主義(naturalism):自然界の法則のみで現実を説明する立場
- 実存主義(existentialism):個人の自由と責任、意味の創造を重視